鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

人権無視で出世する捜査陣  第220回

2024/12/04
  横浜市にある機械メーカーが「生物兵器」に転用可能な「噴霧乾燥機」を製造、中国に輸出した、として社長など幹部が逮捕されたのが、「大川原化工機」事件である。冤罪というよりは、警視庁公安部のでっち上げ事件、といった方がわかりがいい。 

  「外為法違反」として逮捕、長期勾留された。逮捕された3人のうち、1人が拘置中に胃がんを発症させ、適切な医療措置もなく死亡した。 

  国家賠償訴訟の証人尋問で、この捜査にあたったひとりの警察官は「捏造だった」と証言した。警視庁公安部が監督官庁、経産省の輸出規制の省令解釈を変更させてまで、逮捕を強行したのは、「捜査の決定権を持っている人の欲だった」とも証言している。 

  権力を持っているものが手柄を立てて出世する。その私欲のための逮捕である。袴田事件でも、警官と検事の捏造が明らかにされた。 

  大阪地検特捜部は「業務上横領事件」の容疑者として逮捕した、無実の「プレサンスコーポレーション」の社長に対して「なめんな」「ふざけんな」と暴言を吐いた。 

  大川原化工機事件で逮捕された島田順司さん(71歳)は、事情聴取されて、メモに書いている。「その内容は供述した内容と大きく恣意的に変更されており、誇張され、話した内容とは大きく変更されていた。私は日本の警察はこのような事をするのかと失望した」(「東京新聞」24年8月26日)。 

  これまでどれだけの人たちが警察と検察に苦しめられ、絶望して来たことか。 

  23 年4月、和歌山県の漁港の演説会場で、岸田首相に手製のパイプ爆弾を投げつけて逮捕された木村隆二被告(25歳)に対して、36歳の和歌山地検の検事は、いかに横暴だったか。朝日新聞が報道した(11月21日)。 

 「犯罪者の方と接していると、引きこもりのまま人生を終える方もすばらしいと思う」「木村さんは社会に貢献できないなかで必死に外に出て、社会にマイナスを生む」 

  警察や検事たちは、相手の人権を押しつぶして出世してきた。新聞もようやく、権力の横暴に批判的になってきた。