鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

国民民主党の原発政策  第221回

2024/12/11
  異例にも、野党の代表として11月末、首相官邸に招き入れられた玉木雄一郎・国民民主党代表は、政府の次期エネルギー基本計画に「原発の新増設」を入れるように進言した。少数与党に転落した石破茂首相が「近ちこう寄れ」と言ったかどうかわからないが、援軍として歓迎したのはまちがいない。 

  と言っても、石破氏は首相になる以前は、原発には消極的だったはずだ。自民党自体が、21年の衆院選までの公約で、原発依存度を「可能な限り低減させる」としていたほどだ。翌年の参院選の公約は「安全が確認された原子炉の最大限活用」とひっくり返ったが、「原発の新増設」までは踏み込んでいなかった。与党の公明党でさえ、「原発に依存しない社会を目指す」と主張してきたほどだ。 

  しかし、22年8月、岸田文雄内閣は「グリーントランスフォーメーション(GX)」などといって、老朽原発の60年以上の稼働ばかりか、新型炉への建て替えや新増設まで一気に先祖返り。原発の最大限活用を公然と語るようになった。人工知能(AI ) 時代に、電力需要が膨大に拡大する、という誇大宣伝である。 

  野党のはずの国民民主党が、与党の公明党よりも原発に執心するのはなぜか。原発再稼働を焦る電力会社や、新規需要を期待する電機メーカーなどの欲望を代弁しているのはまちがいない。それらの企業の労組も原発再稼働、新増設賛成だからだ。 

  原発は安全、とは建設促進のためのプロパガンダだった。いま、再稼働には、避難訓練が欠かせない。しかし、避難計画は実効性がない、とする住民の訴えを仙台高裁は、棄却した(11月27日)。

  さすがに長大な活断層が発見された日本原子力発電の敦賀原発再稼働を、原子力規制委は認めなかった。しかし、東北電力女川原発2号機、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の運転も認められている。 

  経済が大事の価値観に裁判所は束縛されている。福島原発事故の始末さえ未解決で現在進行中、未来の廃棄物処分も未解決だ。それでも原発にこだわる政党は将来必ず裁かれる。