鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

ミライからの報告  第223回

2024/12/25
 「保守とはリベラルのことである」とは石破茂の『保守政治家』の主張だ。11月末に行った所信表明演説で、基本方針と結語との双方に石橋湛山の言葉を引用しているのは、湛山、田中角栄、大平正芳、宮沢喜一に連なる「保守リベラル」の標榜のようだ。 

  少数与党に転落した首相として、どれだけリベラルぶりを発揮するか、と見守っても、「同盟国・同志国との連携をさらに強める」という米国依存がさらに強まる方に進みそうだ。「国防軍創設」とする憲法改定がかねてからの持論だ。党内多数派と同じ「防衛力の抜本的強化」もすすめられよう。 

  所信表明では、原発には全く触れなかったが、総裁選前まで端切れのよかった「原発依存度をゼロに近づける」は棚上げ。国民民主党、維新など野党の一部を巻き込んだ悪政が始まろうとしている。

  さて、原発反対運動をどうひろげるか、が来年の最大の課題になる。若ものたちの関心を高め、どのように一緒に行動できるか。 

  原発ゼロ、廃炉の後始末、核廃棄物の最終処分場などは、今の問題であるとともに、未来に残る課題だ。つまりは、私たちが、未来に残す負の遺産でもある。 

  未来の運動家たちとどうつながるか。それが今までの運動にはなかった課題だ。その象徴的なケース。福島原発2号炉の核燃料デブリ880㌧のうちの13年がたって、ようやく0・7㌘だけ。それもデブリかどうかわからない物体、という。そんな困難な仕事が、これから何百年も続けられる。 

  原発は「原子力明るい未来のエネルギー」という双葉町の小学生に作らせた標語などによってすすめられた。しかし、福島の事故の現実が原発の真実を明らかにした。いまは、原子力規制委員会による敦賀原発2号機の「再稼働不許可の決定」もある。 

  この原発が建設された頃、活断層の知見は弱かった。危険性をキャッチできなかった。それは全国の原発立地点にも共通する恐怖だ。 

  来年は、現在の知見と未来への想像力で構想する、幅広い運動にしていきたい。