道しるべ

日中両国の摩擦を増幅
菅・バイデン電話会談

2020/12/08
 菅義偉首相は11月12日、米国のバイデン次期大統領と電話で初めて会談し、日米同盟の強化と、「尖閣諸島」への日米安保条約5条の適用を確認した。「確認」の問題点、そして狙いは何か。

歴史的合意を無視

 政府は尖閣諸島、竹島、南千島(北方領土)は「日本固有の領土」と主張してきた。しかし、これまでの歴史的経緯を無視したもので各国は承服していない。

 尖閣諸島の帰属間題では、歴史書、文献などを基に、中国、台湾、日本の3カ国が「固有の領土」と主張している。

 戦後の日中間の重要なポイントは、1972年9月に両国間で「日中国交正常化」が実現したことだ。また、1978年8月には日中平和友好条約を締結した。この時、尖閣諸島の帰属問題は日中双方が「棚上げ」「将来に委ねる」とした経緯がある。

 その後、2000年に日中漁業協定が発効し、操業が許され、取り締まりは操業国が行うこととした。しかし、日本は2010年に尖閣諸島海域で操業中の中国漁船に日本の国内法を適用し、船長を逮捕した。

 これを受けて12年、石原慎太郎知事(当時)は尖闇諸島を東京都として所有者(民間人)から買い取る募金運動を始め、当時の野田佳彦内閣が国有化した。これを契機に、日中両国は尖閣を巡って摩擦を起こしてきた。

米は尖閣を守るか

 菅首相は電話会談後、「尖閣諸島の防衛は日米安保5条」で担保されたと胸を張った。しかし、米国は尖閣諸島の帰属は日本とせず、中立の立場だ。但し、2009年3月、オバマ政権は「尖閣諸島は日本政府の施政下にある。日米安保条約は日本の施政下に適用される」とした。

 だが、尖閣で日中の軍事衝突が起きても、米国は直ちに出動はしない。議会承認の手続きもあり、議会が軍の出動を認めるかどうかは分らない。尖闇諸島の武力衝突が全面的になれば、自衛隊が独力で戦う力はないというのが現状だろう。

「緊張」口実に軍拡

 問題は、日本政府が尖閣諸島や朝鮮半島など東アジアの緊張状態を軍備増強のための扇動材料にしていること。日本の軍事費は、毎年膨張し、来年度防衛予算の概算要求は過去最大の5兆4897億円。軍事費はこの8年、うなぎ上りだ。

 軍事費は、米国の軍産複合企業や日本の兵器産業に莫大な利益をもたらす。政府の「尖閣諸島」の扇動に乗らず、憲法前文と9条を生かした外交努力で国際問題を解決すべきだ。