鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

下北核半島の現在(下)  第229回

2025/02/19
  青森県六ヶ所村の歳入の7割以上を固定資産税などが占める、とする福田進治・弘前大学教授の論文(「青森県の経済と核燃マネー」、『原発・核燃と地域社会』北方新社)を前回紹介した。全国9電力と日本原子力発電が共同出資している、日本原燃(資本金4千億円、社員3千人)の本社が置かれ、核燃料サイクルの完成を目指している。 

  しかし、使用済み核燃料再処理工場は、1993年4月に着工したが、試運転に失敗したまま。それでもこの会社の固定資産税と電源三法交付金などによって、六ヶ所村は地方交付税の不交付団体である。 

  核燃サイクル施設の建設は、低レベル放射性廃棄物の永久処分場から始まったが、当初は濃縮ウラン工場も含めて一兆円、この内、再処理工場は7600億円と言われていた。しかし、すでに再処理工場だけで3兆2100億円も費消した。 

  再処理工場が存在するだけで、政府からカネが流れてくる。その秘密は政府の原発政策の宣伝塔だからだ。使用済み燃料からウランとプルトニウムを取り出します。そのプルトニウムをMOX燃料にして、また原発で発電します。その「夢の増殖炉もんじゅ」も廃炉、核燃料サイクル構想が破綻しても、政府はまだプルトニウムにこだわっている。 

  「英、プルトニウム地下廃棄へ 再処理後の100トン超『資産』から一転」(「朝日新聞」2月2日)。 英政府は、これまで「資産」としてきた、民生用プルトニウム100㌧を、地中に埋めて廃棄する方針を発表した。これは画期的な決定である。原爆の原料であるプルトニウムは、日本でも英国に再処理を委託した21・7㌧、フランスへの委託分14・1㌧、国内に8・6㌧。合計44・4㌧を所有している。プルトニウム原爆で5千5百発分以上である。 

  さすがの軍備強化一本槍の石破茂首相も、まだ核武装とまでは言わないが、「資産」「運用」などと言わず、英国に倣って「廃棄」と明確に言うべきだ。 

  ただ、活断層まみれの日本の場合、埋める場所はどこにもない。下北半島が狙われるのだろうか。