鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

トランプとマスコミ  第232回

2025/03/12
  トランプ米大統領が猛威を振るっている。国会議員でもないのに「政府効率化省」の最高権力者にしたのが、金持ち世界一というイーロン・マスク氏で、「無能な官僚は全て排除」と大量解雇を開始。 

  なにしろ、大統領宣誓就任式には、「ワシントン・ポスト」のオーナーであり、アマゾン会長のジェフ・ベゾスやメタ最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグなど、ハイテク企業の金持ちたちが勢揃い。それぞれ100万ドル(1億5千万円)を拠出していた。選挙戦でも公然たる寄付行為が行われていたのは周知の通り。

  これでもアメリカは民主主義国家と言えるのだろうか。 

  かつては、鉄鋼や自動車などの大労組は民主党支持で、デトロイトへ行ったとき、たまたま宿泊していたホテルで、UAW(全米自動車労組)が大会を開いていた。いま政府職員たちが闘争にたちあがらないのが不思議だ。ハイテク企業はオバマ時代から民主党と連携を強めていたそうだが、トランプの富裕者優遇や規制緩和に期待を寄せて集まっている。 

  一方、ワシントン・ポストの論説チームは、敗退した民主党候補のカマラ・ハリスの推薦を決めていたそうだが、オーナーのベゾスの判断で推薦を見送った。「それに抗議して数人のジャーナリストが辞職、デジタル購読者が30万人、解約した」(ニューヨーク在住ジャーナリスト・津山恵子。「メディア展望」2月号)。 

  この記事によれば、英紙「ガーディアン」は、以下のように書いている。「私たちの周りでは、報道機関が屈服し始めている。まず、二つの報道機関が億万長者のオーナーの意向で選挙の推薦を取りやめた。次に、著名な記者たちがマ・ア・ラゴ(注・トランプ氏の自宅)で膝を屈した。そして、主要テレビネットワークであるABCニュースは、トランプ氏の法的攻撃に応じて屈し、トランプ氏に有利な和解に同意した」。 

  名誉毀損で訴えられていた同社は、トランプ氏に23億円を支払った。が、ガーディアン紙は「私たちの忠誠は、権力者ではなく、国民にある。真実から身を引くことはない」。