今週の新社会

トランプ関税
〝幻想〟の第2幕

2025/04/23
トランプ関税に欧米市民が1300カ所で一斉に反発・抗議した。
写真は「ファシスト アメリカを拒否する!」と書かれたプラカードを掲げる市民たち=4月5日、米国ワシントン


更なる格差生む
世界中で広がる反発
 

    トランプ米大統領が〝偉大なアメリカを再び〟と、アジアを中心に世界に関税戦争を仕掛けた。トランプ政権を復活させた原動力は米国市民の貧困。作り出した敵と闘い、豊かな米国を取り戻すという幻想の第2幕だ。分業で成り立つ世界経済に、トランプ流の短絡的・身勝手な一律高関税をかければどうなるか。

  今日のアメリカの起点は1980年、ロナルド・レーガンが大統領に就任したときだ。レーガンはサッチャー英首相と組んで、競争と利益がすべての新自由主義とグローバリズムをまき散らし、富の一極集中を進めた。 

  これに対して中国は、80年代の日米貿易摩擦を「他山の石」として「引いたら負け」と報復関税と米国に対抗する国際的包囲網を作ろうと動き出した。 

  二大国の経済戦争の中、情けないのは日本政府。米国が、「日本はもうけ過ぎ、非関税障壁もなくせ」というのは、農産物の更なる輸出増、軍事費を更に増やさせて武器を買わせ、軍事負担を減らそうという意図がある。石破政権は何を差し出してひれ伏すのか。 

  貿易と関税は本来、互恵関係と自国産業の保護にある。この秩序が壊れて犠牲となるのは貧困な国々と世界の市民だ。富裕層は株価乱高下の中でも利益を確保する。 

  米国型のグローバリズムは、コスト削減と市場拡大、利益の最大限追求だ。米国だけでなく、世界の先進国は工場を海外に移転させ、国内の労働者の失業と低賃金、貧困を生み出した。米国の富裕層は、金融やネット、デジタル、そして軍需で富を最大化した。 

  錆びついた工業地帯・ラストベルトを生み出した富裕層に抗議して4月5日、ワシントンで数千名の集会など、全米で1200カ所、世界1300カ所で、反トランプ、反イーロン・マスクの行動が起きた。 

  関税が上がれば、輸出側は関税分の価格が上がり、売りにくくなる。関税は国が輸入業者にかけ、物価高・不況となって市民を襲う。米国で新たな悪循環が生み出される。