道しるべ

緊張緩和への道を開く

2025/06/25
画期的な李在明氏の勝利 

  韓国大統領選で、革新系の李在明(イジェミョン)氏がほぼ5割の支持で勝利した。任期は5年、議会は与党が絶対多数を占めており、韓国は変わる。アジアの緊張緩和に寄与し、日本の平和に大きな意義がある。

  日本政府や与野党の多く、メディアは李政権を歓迎しているとは言えず、「尹政権で改善された関係が維持されるのか」と心配する。わずか2年間の尹錫悦(ユンソンニョル)政権時代が「良好な日韓関係」で、その前の文在寅(ムンジェイン)政権の時代は好ましくないという。 

文在寅政権の仕事 

  しかし、尹政権によって「改善された日韓関係」の内実は何であろう。まず、文政権の実績を振り返ってみよう。 

  文氏はトランプ米大統領との会談で、対中国の長距離ミサイルの韓国配備を延期させた。朝鮮民主主義人民共和国の金正恩氏との首脳会談を重ね、「朝鮮戦争の平和協定締結をめざす」合意をし、トランプ氏を引き出して18年に米朝首脳会談を実現させた。 

  トランプ氏はその後、消極的になり翌年のマニラ会談で破談したものの、ここまでこぎつけた文政権の仕事はまことに大きい。未だ「休戦」の朝鮮戦争の「停戦」が、東北アジアの緊張緩和に歴史的な役割を果たすことはいうまでもない。 

  それだけに右翼の風当たりも強く、22年大統領選で後継の李氏は僅差で敗れ、韓国は暗転した。 

戒厳令の口実作り

  
一方、尹政権は何をしたか。23年8月のキャンプデービットでの日米韓首脳会談の合意は、尹政権の外交・安保政策の骨格となった。それは日米韓の軍事同盟化をめざすものだ。 

  「複数領域に及ぶ3カ国共同訓練」の実施、「北」に対抗する「弾道ミサイル防衛協力」も言明した。従来、米韓と日米のそれぞれの軍事同盟だったものを合体させ、軍事対象を「北」に加え中国へとシフトした。最近、中谷元防衛相が公言する「ワンシアター構想」の要である。 

  尹政権は「北」を挑発し、局地戦を起こし戒厳令の口実にしようとした。幸い「北」は挑発に乗らず戒厳令も頓挫したが、自衛隊も出動しかねない極度の緊張状態を期したのが尹政権であった。 

対中包囲にも風穴 

  韓国民衆の決起と李氏の勝利は尹政権の野望だけでなく、米日韓の対中包囲網にも風穴を開ける可能性を切り開き、日本の戦争準備にも強力なNO!を突き付けた。とはいえ国際的な「新冷戦」状態と国内右翼勢力の抬頭で、李政権の前途は容易ではない。 

  日韓民衆連帯を強め、平和をめざそう。