今週の新社会

米、イランを先制攻撃

2025/07/02
深さ60メートルの地下施設を破壊するとされる米軍のバンカーバスター爆弾。
イランの核施設攻撃では12発が撃ち込まれたという=米空軍のHPより


参院選の争点に

国際法に違反
問われる日本の対応

     
米軍は6月22日、イランの核施設3カ所を先制攻撃し、イスラエルとともにイランとの全面戦争を開始した。米国は無条件降伏までイラン攻撃を続ける構えだ。ホルムズ海峡の緊張へのNATOと日本の関与など深刻な事態になりかねない。

ホルムズ海峡封鎖「安保法制」の適用例

     
トランプ米大統領は17日、イランに「無条件降伏」を呼びかけ、ハメネイ師の排除(殺害)まで公言した。19日には「米軍の関与は2週間以内に」と声明、空母を中東に派遣し数十機の空軍給油機を欧州に展開させた。 

       トランプ氏は核施設攻撃の後、イランが要求をのまなければ更なる攻撃と言明し、イスラエルのネタニヤフ首相は「トランプ大統領変える」と歓迎。イランは米軍へも「自衛権」を行使するだろう。 

G7の総体が加担 

        トランプ氏が退席したカナダでの「G7首脳会議」で既にG6首脳は米国の参戦を想定していたようだ。「首脳声明」(17日)は、「イスラエルは自衛権を有することを確認し、イスラエルの安全に対する支持を強調する。イランは地域の不安定及び恐怖の主要な要因であり、イランは核兵器保有できない」、「我々は、国際的なエネルギー市場の安定を求めるために連携する用意がある」とした。

  ドイツのメルツ首相は、「イスラエルは、我々のために汚れ仕事をしている。敬意を表する」とすら述べた。
「エネルギー市場の安定」は、石油供給の要衝・ホルムズ海峡封鎖への対応が要だが、封鎖阻止の軍事行動の可能性をはらむ。 

  G7諸国が米とイスラエルの先制攻撃を容認し、強弱はあっても対イラン包囲・殲滅に加担する事態は、国際法を蹂躙(じゅうりん)して戦火を拡大し、核廃絶への道を閉ざす蛮行だ。 

  イランと米国などは2015年「核合意」で解決に向かっていたのに、19 年に離脱し、経済制裁を再開したのがトランプ政権だ。非公然で核保有するイスラエルは、イランも参加する核拡散防止条約に加盟せず、イランも受け入れるIAEAの査察も拒否してきた。 

自衛隊派遣も想定 

  日本政府はイスラエルのイランへの先制攻撃は「容認できない」(岩屋毅外相)としたのに、G7声明に加わった石破茂首相は米国の攻撃の是非は「政府内で議論する」と豹変。24日からの中東情勢を議題としたNATO首脳会議は欠席した。  

  イランによるホルムズ海峡封鎖は「安保法制」審議の際「集団的自衛権行使」の適用例とされた。防衛省内では自衛隊派遣を想定した議論が始まっている。参院選で、日本の対応を問う重要争点にしなければならない。