鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

ポピュリストの正体  第250回

2025/07/30
  参院選最大の関心は、自公政権が過半数を獲得できるかだった。結果は見事に衆議院とともに過半数割れ。少数与党は自民党結成以来の惨敗だった。 

  「庶民」の生活が苦しいのに、自民党2世、3世政治家たちはパーティを開いては会費を集め、私腹を肥やしていた。それへの反発が強い。 

  地盤がなくとも当選したのが、SNSを活用する新興政党である。「惨政党」と悪口を言う人もいるが、東京選挙区で66万票を集め、当選7人中2位になった歌手のさや候補は、「核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の一つ」と言い放っていた。 

  彼女は2年前に、「皇統を守る会チャンネル」とかの番組で「徴兵制が担ってきた教育的な役割、学校教育では教えられないことが、兵役の中では教えること、体験することができる」と発言していた(「朝日新聞」7月18日)。 

  自民党極右の高市早苗氏に匹敵する右派ぶりだ。参政党は「日本人ファースト」を旗印に、「日本は日本人の国だ」と外国人排斥を強調、仕事や土地を奪われる、などと憎悪をかき立てた。 

  共同通信の出口調査によると、50代以上は自民党に、30代、40代が参政党に、20代以下は国民民主党に多くの投票をしたという。働き盛りだが、現状に恵まれず、未来に不安を抱える層が、最近目立つようになった外国人へ憎悪の目を向けている。 

  参政党の神谷宗幣代表は、親和性の高い外国の政党について質問され、トランプ米大統領を支える共和党の保守派、欧州の極右政党のAfD(ドイツのための選択肢)や、英国の「リフォームUK」、フランスのRN(国民連合)を列挙した(「東京新聞」7月22日)。 

  「参政党」は、2020年に大阪府吹田市の市議だった神谷氏を中心に結成、すでに地方議員150人を擁している。今回一挙に参議院で14議席を占めた、けっして泡沫政党として安心できない。 

  「オオカミ少年」というむきもあるが、むしろ、村人たちを誘導してどこかへ連れ去った「笛吹き男」というべきであろう。