今週の新社会

「終末時計」は89秒

2025/08/06
ヒロシマ・ナガサキへ

広島・長崎への平和行進に出発する日本山妙法寺の僧侶や市民=7月12日、東京・江東区、夢の島の第五福竜丸展示館で

「核のタブー」が危機
核廃絶へ草の根から


   「終末時計」の残りは89秒。今年1月、米科学誌発表の「人類最後の日」までの残り時間が最短となった。気候変動問題に加え、戦後の国際秩序が崩壊しつつある。核の脅しがまかり通り、格差と貧困の増大が社会の分断を増幅する現状の反映だ。「核抑止力」に対する草の根からの核兵器廃絶の運動が問われる夏を迎えている。

原爆投下80年 

        昨年、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)にノーベル平和賞を授与したノルウェー・ノーベル委員会のヨルゲン・ワトネ・フリドネス委員長(40歳)が7月22日から24日、初めて被爆地、広島、長崎を訪問。フリドネス氏は、広島の平和記念資料館、長崎の原爆資料館を訪れるとともに、高校生平和大使や被爆者団体と交流した。 

        フリドネス氏は、被爆者が長い時間かけて先頭に立って作り上げた、核兵器は使ってはならないとする「核のタブー」が脅威にさらされていることに危機感を表明し、「世界の指導者は広島、長崎を訪れ、被爆者の証言に耳を傾けるべき」と核廃絶を訴えた。 

         ロシアがウクライナとの戦争で核使用をほのめかし、イスラエルと米国は相次いでイランの核施設を爆撃。米国は核先制攻撃戦略を持ち、イスラエルの核施設攻撃は1981年、イラクのバグダッド近郊のオシラク原子炉を破壊したのに続く2度目の先制攻撃だ。 

       オシラク原子炉攻撃直後に開かれた国連安保理で、イスラエルが自衛権を主張したのに対し、日本は武力行使がなかった以上、武力行使は正当化できないと批判。米国もイスラエル非難決議を支持、決議は全会一致で採択された。今回のトランプ大統領の対応とは異なり、国際法秩序に基づくものだった。 

       フリドネス氏はじめ核廃絶を願う人々が核使用の危機感を抱く。「核のタブー」を強め、「核抑止力」の脅しと戦争への草の根からの抵抗が求められる。 

       いま、各地から広島・長崎を目ざして平和行進が行われ、核廃絶を目ざす集会などが取り組まれている。