今週の新社会

「核の脅し」要求
自衛隊、米軍に机上演習で

2025/08/13
     戦後80年、非武装平和の憲法を持つ唯一の戦争被爆国・日本が戦争への道を暴走している。参院選では核武装に言及する候補者が当選し、吉田圭よし秀ひで統合幕僚長(当時)は昨年2月、自衛隊と米軍が実施した「台湾有事」想定の最高レベルの机上演習で、米軍に「核の脅し」で中国に対抗するよう求め、米軍が応じたと共同通信が7月末配信した。

「台湾有事」想定 

      共同の配信は『東京新聞』など各紙が報じたが、日米共同統合演習で「核の脅し」を組み込んだのは初めてという。自衛隊が米軍に「核の脅し」で中国に対抗するよう求めたのは、「拡大抑止」の戦略に基づく。 

    「抑止力」の強化が「拡大抑止」、すなわち核使用想定を必然とすることを今年6月に笹川平和財団が打ち出した提言「日米同盟における拡大抑止の実効性向上を目指して―『核の傘』を本物に―」が示している。「提言」は元統合幕僚長と元太平洋軍司令官など日米の軍事中枢経験者を中心にまとめられたものだ。 

       政府は22年閣議決定した「国家安全保障戦略」で「米国による拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層強化する」とし、昨年12月に「日米政府間の拡大抑止に関するガイドライン」で、①「拡大抑止に関連する日米同盟における手続きの強化」②「抑止を最大化するための戦略的メッセージング」③「日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止のための取組の強化」を定めた。 

    「ガイドライン」の内容は国家機密扱いでメディアも報じなかったが、「提言」はその帰結をあからさまに述べている。

   ③ の「日本の防衛力」で「増進される米国の拡大抑止のための取組」とは、自衛隊が敵基地を攻撃すれば「対象国を直接打撃するため」、「敵方が核兵器使用へと事態をエスカレーションさせるリスク」があり、「核兵器をどう位置付けるか本格的な日米調整」が必要だというのである。 

    しかし日本では「非核三原則、核共有等」の議論は忌避されており、特に「持ち込ませず」では米軍の核搭載装備は日本に配備されないことになる。「日本自身が、どのようにして米国の傘を実効あらしめるか」に関して、「政府も国民も思考停止状態」だといい、「非核三原則第3項『持ち込ませず』の見直し」が急務だと主張。 

     その際、民主党政権時代の岡田克也外相答弁「政権の判断で非核三原則の例外を認める」(10年衆院外務委)に従って見直せと、立憲民主党への揺さぶりも用意している。 

     このほか、「自衛隊の反撃能力を米国の核抑止態勢に有機的に統合」、戦術核を搭載できる各種ミサイルの「離島配備」なども提言している。