道しるべ

国は誠実に対応せよ

2025/09/03
原告が勝った生活保護訴訟 

  2013年から史上最大の生活保護費の引下げの違法性を問うた「いのちのとりで裁判」で最高裁は6月27日、国の対応を違法とする判決を出した。しかし、厚労省は不誠実な対応に終始している。 

史上初めての判決 

  これまで、有名な「朝日訴訟」をはじめ生活保護基準を巡る裁判は多く起こされてきたが、国が定めた生活保護基準について最高裁が違法としたのは史上初めてのことである。今回の判決は、日本の社会保障の歴史に刻まれるものだ。 

原告団などが要請 

  判決直後、原告団・弁護団及び全国の裁判支援のネットワークである「いのちのとりで裁判全国アクション」は、厚労相宛てに要望書を提出した。 

  要望書は、①国が生活保護利用者に真摯な謝罪をすること(原告1025人中2割を超える232人が既に亡くなっている)、②2013年の改定前の保護基準との差額保護費を遡そきゅう及支給すること、③2013年改定に至る経緯と原因などを調査・検証する検証委員会を設置することなどである。 

  そして、交渉には課長以上の出席を求めたが、出席したのは企画官で、「まず謝罪を」と求めた原告に対し、「判決の内容を精査し適切に対応する」とロボットのように繰り返したと報告されている。

「専門委員会」を設置 

  交渉にゼロ回答を続ける一方、福岡資すけまろ厚労相は7月1日の記者会見で「判決を踏まえた対応方法について専門家に審議頂く場を設ける」方針を示した。 

  専門家の審議の場とは、折しも2027年の生活保護基準改定に向けて6月24日開始された社会保障審議会生活保護基準部会の中に、「最高裁判決への対応に関する専門委員会」を設置するというもの。 専門委員会のメンバーは9人だが、生活保護基準部会のメンバー9人中6人が会長を含めて兼任している。そして、原告側の「当事者を入れた協議」の要望を無視し、8月13日に専門委員会をスタートさせた。 

  また、福岡大臣は8月15日の全国戦没者追悼式典前の記者会見で「原告への謝罪の考えはあるか」との問に、「生活保護行政を所管する厚生労働省として真摯に反省」と言ったが、謝罪については語らなかった。傲慢な対応で許されない。 

1日も早い補償を 

  国は、10年以上にわたって最低限度の生活さえ保障しなかったことを素直に謝罪し、当事者を入れた協議を行い、被害の補償を1日も早く行うべきだ。