道しるべ

「スパイ法」再提出許すな

2025/09/10
「知るな、見るな、話すな」 

  今年は戦前・戦中に猛威を振るった弾圧法・治安維持法制定から100年。敗戦で希代の悪法は廃止されたが、治安維持法体制は、「スパイ防止法」の名で、現代社会に復活しようと蠢(うごめ)いている。

  治安維持法の最高刑は「死刑」。戦後も国家への「反逆」を死刑または無期懲役で罰する法案が国会提出されている。自民党が1985年6月、議員立法で衆議院に提出した「スパイ防止法案」だ。 

国際勝共連合蠢く 

  岸信介首相は1957年、米大統領にスパイ防止法を約束したが、60年安保で退陣した。1978年の福田赳夫首相答弁「スパイ天国といわれる状態を放置してていいのか」を契機に蠢き始めたのが統一教会の関連団体・国際勝共連合だ。 

  岸氏と娘婿の安倍晋太郎元外相が意欲を示したスパイ防止法は、孫の安倍晋三氏が大きく「前進」させた。第二次安倍政権は2013年の臨時国会に「特定秘密保護法案」を提出、自公が強行した。 

  秘密保護法は、特定秘密を伝え、公表を禁止、違反者は最高10年の懲役。16年に共謀罪を強行。22 年は、経済活動と科学技術研究を国家安全保障の柱にする経済安全保障法、昨年の通常国会で、経済分野に秘密保護を拡大する経済秘密保護法が成立した。

「スパイ法」と違う 

  一連の秘密保護法制は限定的で、包括的なスパイ行為摘発を想定した「スパイ防止法」とは違う。 

  自民党「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」の高市早苗会長は5月20日、石破茂総裁にスパイ防止法制定の検討を提言、参院選公約に「諸外国と同レベルの安全保障を確保するため、国家情報戦略やスパイ防止法の導入に向けて検討を進める」と明記した。

野党各党にも動き 

  スパイ防止法制定は野党も動く。参院選で国民民主党は「スパイ防止法制定」、日本維新の会も「諸外国並のスパイ防止法を制定し情報安全保障を強化」、日本保守党は「スパイ防止法制定、諜報専門機関の設置及び関連法整備」と公約。 

  参政党も「日本版『スパイ防止法』等の制定で、経済安全保障などの観点から外国勢力による日本に対する侵略的な行為や機微情報の盗取などを機動的に防止・制圧する」と公約。参政党は12議席を獲得、参院で単独法案提出権を得て、秋の臨時国会に法案提出を狙っている。 

  「スパイ防止」という言葉に治安維持法下の暗黒の歴史を思い、「知るな、見るな、話すな」の社会を再来させない決意と闘いが求めらる。