今週の新社会

石破首相が退陣表明

2025/09/17
政治空白は続く
捨て置かれた国民生活


       石破茂首相は9月7日、首相官邸で記者会見して退陣を表明した。事実上のリコールとなる総裁選前倒し要求の可否が確認される前日の表明で、参院選大敗から50日だ。解散総選挙もちらつかせて続投・延命を策したが、党内闘争に敗れた。一方、石破降ろしで顕在化した自民党の亀裂と、国民不在の権力闘争による政治空白で政治不信はいっそう深刻化した。

       自民党は、政治とカネ・裏金疑惑で命脈が尽きた岸田文雄前首相の後継に、党内野党・「正論主張」を自認してきた石破氏を選出して再建を託したが、衆院選、東京都議選、参院選と3連敗の責任を石破氏に押しつけた。 

      石破氏も選択的夫婦別姓制度導入に前向きな主張などを次々と後退させ、国民は「改革色を失った」といらだち、「何をやりたいのかわからない」という不信感を募らせた。 

      退陣表明の記者会見で石破首相は、トランプ米大統領が関税交渉の大統領令に署名したことを「一つの区切り」と退陣の理由にした。 

       だが、参院選中に「国益をかけた闘いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない。守るべきものは守る」と言明したにも関わらず、自動車関税の引き下げとコメ輸入拡大を引き換えにした。 

       石破退陣表明で局面は次の総理・総裁は誰かに移った。参院選最終盤に「もう一回、党の背骨を入れ直す」と表明した高市早苗衆院議員が総裁選立候補に意欲を示す。 

        参院選で参政党に右派支持層を奪われ、「党が左に寄り過ぎた」という声が自民党の一層の右傾化を進めることが想定される。連立を組む公明党の斉藤鉄夫代表が、「保守中道路線の議論を望みたい」とけん制するほどだ。 

        総理・総裁に誰がなっても、衆参とも少数与党であることに変わりはない。石破首相は予算案などを通すためパーシャル連合でしのいだが、次の首相は連立の枠を広げようとするだろう。参院選で限界を露呈した日本維新は、大阪関西万博やカジノを含む統合型リゾート開発で自民と繋がりを深め、憲法改悪でも足並みをそろえる。 

        当面する重要な課題は、政治空白でないがしろにされている国民の生活苦や不安、息苦しさへの対応だ。政治とカネの問題も未解決、ガソリン税減税も財源論で停滞している。消費税減税は捨て置かれたままだ。参院選後の政治空白は、自民党総裁選でさらに続き、臨時国会開会のめどはたっていない。 

        一方で軍事費増大と戦争準備はノーブレーキで暴走、軍事ローンの「後年度負担」は来年度16兆円を超え、過去最大となる。増税か、生活関連予算の切りつめか、前途には暗雲がたなびく。