今週の新社会

介護保険が危機に

2025/09/24
原因は市場原理
訪問事業所ゼロ地域増える

     
公的介護保険制度は2000年に始まり、現在第9期計画に入っている。新社会党は制度導入の法案審議で「保険あって介護なしになる」と反対したが、訪問介護にその兆候が鮮明だ。背景には、社会保障財源を「税から保険」へと市場原理に転換したことがある。市場原理で介護の担い手は低賃金に、低賃金が人材不足の悪循環を招いている。27年度からの第10期計画は更に自己負担増・サービス減の大ナタが振るわれようとしている。

        竹内義よしのり了徳島県議は「山間地域の介護事業は危機的だ」「2024年度の介護報酬改定、とりわけ訪問介護へのマイナス改定は、地方、山間へき地で住まう高齢者と、その暮らしを支える事業者へ直接的な打撃を与えている」と指摘する。 

事業所1カ所やゼロ 

         介護の要・在宅介護を支える訪問介護事業所は減少が進み、事業所ゼロや1カ所しかない自治体が増加している。6月末時点で訪問介護事業所がゼロの自治体は115町村、1カ所しかない自治体は269市町村で、全市区町村の22%となっている。 

         苦境に喘ぐ事業所に制度を運営する自治体が独自支援するところが出ているが、自治体の財政力や首長の姿勢で違いが出る。ナショナルミニマムとして国が税で補償しなければ、制度は立ち枯れる。 

          訪問介護事業所が町内に1カ所しかない北海道和わっさむ寒町の男性(94 歳)は、週3回各1時間の家事援助を受けている。食事は自分で作り外出も多く意気軒昂だが、元気な高齢者ばかりではない。 

求人倍率14倍にも 

           訪問介護の現場は、ホームヘルパーの求人倍率が14倍という危機的状況だ。ハローワークでは採用できず、民間の有料職業紹介サービスを利用せざるを得ず、手数料は高い。

  しかもホームヘルパーの平均年齢は上昇、23年度は50・5歳となっている。身体的負担が大きく、高齢ヘルパーにはきつい仕事だ。 

  更に、他産業との賃金格差は広がる。昨年の全産業平均と介護職員の給与格差は月8・3万円。他産業で賃上げが進んだことで、前年の月6・9万円から大幅に拡大した。 

  事業者は、最賃が引き上げられると最賃基準は守るが、それを超える賃上げまでは手が回らない。介護保険事業計画は3年計画で報酬単価が決まるので、物価高騰や賃金引き上げに追いつけない。そのため人手不足が進み、事業所は廃業や倒産に追い込まれる。 

報酬の改定は毎年に 

  竹内県議は、介護報酬改定を毎年行うこと、介護に「公」を取り戻すこと、採算性・収益性が悪化する過疎や山間地域の介護サービスは「公」でしか成り立たないと訴える。