道しるべ

「国家には対策の義務」

2025/09/24
 気候に関するICJ勧告

  異常気象の脅威は人間生活に深刻な影響を及ぼしている。日本でも記録的な猛暑が続いているが、大型台風や集中豪雨による甚大な災害も多発している。その頻度と規模は年々増大・拡大している。

進む深刻な温暖化 

  国連気象機関は、「2024年の世界平均気温は産業革命前と比べて1・55℃上昇し、観測史上最高を記録した」と発表している。 

  気象庁は本年3月、日本でも20世紀初頭と比べ、近年(1995年~24年)、平均1・3度上がっている。20年には西日本で、平年より6度近く高い時期があったと発表した。  

  日本では異常気象による干ばつで、森林火災が1カ月以上も続いた岩手県三陸町の火災も記憶に新しいが、線状降水帯など集中豪雨の脅威にさらされている。 

国連機関が「勧告」 

  本年7月23日、国連の主要な司法機関である国際司法裁判所(ICJ) は、「国際法上、国家には気候変動対策をとる義務がある」とする極めて重要な「勧告意見」を公表した。 勧告には法的拘束力はないが、今後、気候変動枠組条約締約国会議(COP)や各国から多数提出されている気候訴訟、各国の気候変動対策等に実質的な影響を及ぼす可能性があるといわれている。 

日本への影響は大 

  気象学者らは、温室効果ガスの排出を削減せず、世界平均が4度上昇した場合、日本では5・1度上がると警告する。陸地が多い北半球の日本では気候変動による影響を受けやすく世界平均よりも上昇幅が大きくなりやすいという。 

  猛暑が増え、多くの水蒸気が大気中に含まれ、雨の降り方が極端になれば、甚大水害が起きることは必至だ。農業生産にも悪影響が出る。

27人の学生が主導 

  今回のICJへの諮問は、太平洋の島しょ国であるバヌアツが主導し、132カ国が共同提案国となったものだが、バヌアツの動きは、南太平洋大学(オセアニアの12 の小規模島嶼国家群が共同で設立した公立大学)の27人の学生が主導したキャンペーンから始まったといわれている。 

  このままではパリ協定の「1・5℃目標」を実現できない、という危機感が直接の動機だが、2020年には、世界の若者グループと連携、世界的な広がりを見せた。 

  ICJには91カ国と国際機関から陳述書や意見書が提出され、「勧告」に結実したが、日本政府がこの重く真摯なメッセージをどう受け止めて行動に移すのか、監視が求められる。