道しるべ

物価と賃金好循環のウソ

2025/10/01
一般会計概算要求

  来年度政府一般会計の編成が始まり、概算要求は今年度より6%多い122兆・4千億円余と過去最大。事項要求のみも多く、さらに膨らむ。この26年度予算では二つの要因が新たに加わった。

インフレ型財政へ 

  概算要求での新要因の一つが、資材価格や人件費の上昇を広く経費に反映させたこと。「インフレ局面での予算編成」(加藤財務相)への移行である。 

  経済的には、「パイを拡大する中で、物価上昇を上回る賃上げを普及・定着させ、賃上げを起点とした成長型経済の実現」(「骨太方針25」)の目論みだ。 

  政府は、このインフレ型経済で高い税収が続き、年10兆円もの財政余力が生じると皮算用する。 

「金利ある世界」 

 
もう一つが24年3月の日銀のゼロ金利政策解除後の、「金利のある世界」での予算編成だ。この下で概算要求での国債費に、加藤大臣が言う「足元の長期金利水準の高止まり」+「国債残高の累増」が反映した。 

  国債費は国債の利払いや償還に充てるものだが、財務省は利払いの想定金利を今年度2%から2・6%へ引上げた。これらにより、要求額は今年度28兆2179億円を上回り、過去最大の32兆3865億に上った。

  直近の背景にあるのが、今年5月での20年物国債の金利が17年ぶりに1・6%台への水準上昇がある。ここには、一層の金利高への将来不安も垣間見える。 

軍拡予算が来年も 

  防衛省の概算要求額は8兆8454億円で、今年度予算を1450億円上回る過去最大に。さらに事項要求があり、要求はさらに膨れる。 

  新たな点は、ドローンなどの無人機を陸と海と空域に大量配備し沿岸を守るとする「多層的沿岸防衛体制」構築に128 7 億円( 契約金額)を計上したこと。 

  また、敵基地攻撃も視野に入れる「スタンド・オフ防衛能力」に1兆246億円(同)、主要司令部地下化など施設強靱化に1兆738億円(同)を注ぐ。

  だが、財源の一つの所得税増税の開始時期は決まっておらず、与党内での議論が年末へ続く。 

低下続く実質賃金 

  インフレ型経済成長論は現実生活を反映していない。賃金上昇が物価高に追い付かず、実質賃金の低下が続いているのだ。さらにインフレ税(=消費税と所得税の増税)が生活困窮に追い打ちをかける。賃金大幅引上げと所得再分配の税制改革が急務である。