鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

高市暴政を迎えて  第263回

2025/11/05
  党内最右翼の高市早苗を総裁とする自民党と右派政党「日本維新の会」との連立政権となった。自民党は少数与党となり、しかも、政権から公明党が脱落したため、野党連立政権を構築する絶好のチャンスだった。 

  しかし、維新ばかりか、参政党や保守党などの新興政党も自民党よりも右寄り、という奇妙な政治状況の中で、野党統一候補など望むべくもなかった。 

  その政治状況を端的に示したのが、高市内閣誕生の際に「左傾化した自民党から中道政治にもどってほしい」との神谷宗幣参政党代表のコメントだった。「自民党の左傾化」とは産経新聞の見出しにもあったが、それはおよそ1年で崩壊した石破政権への悪あく罵ば だった。 

  「リベラル風」でありながら、現実政治では、岸信介―安倍晋三の血脈で繋がる「党内右派岩盤」に抵抗できず、ついに立ち往生。石破茂の後継者が、ウルトラ右派の高市内閣とは、歴史の悲劇と言うしかない。 

  石破は父親の思想を「非戦、反ファシズム、リベラル」と語っていたが、いま、自民党主流は「保守・中道」でさえ許容できないほどに「右傾化」。維新に補強されながら、政治を進めようとしている。高市内閣は歯止めなく、暴走しようとしている。

  まず、米トランプ大統領訪日である。その結果については、このコラムの発行時には間に合わないが、高市首相はすでにはやばやと、防衛費を2年前倒し、25年度内に国内総生産(GDP)比2%に増額、と言明している。日本は長い間、1%で推移してきた。しかし、トランプはGDP比3・5%を各国に要求しているので、訪日は首相就任祝いの景気付け、2%以上に釣り上げられそうだ。 

  維新との連立は、防衛費の歯止めを緩め、「働け、働け」と残業規制の撤廃。特高による思想弾圧が猛威を振るった、警察国家にもどす「スパイ防止法」。さらには原発再稼働の奨励、国会議員の削減。そして本命の憲法改悪へ、と悪政が強化されようとしている。さまざまな運動を結びつけて暴政を抑え、次の選挙の日まで、幅広く統一候補を準備しよう。