道しるべ

制度を廃し本来の寄付に

2025/11/12
歪んだ「ふるさと納税」 

  「ふるさと納税」は、仲介サイトを利用する人が多い。仲介サイトは利用者にはポイントを付けてきたが、10月1日に禁止された。本来の寄付とは全く違うものになった制度は、廃止すべきだ。 

  ふるさと納税は、自身の故郷や応援したい自治体など、自治体を選んで寄付ができる制度である。 

住民税からは控除 

  寄付した金額分は、居住する自治体の住民税を払わなくもよく(控除)、自己負担2000円で応援したい地域の名産品や宿泊券などをもらえる仕組みだ。収入がある人が対象で、収入がなかったり、所得税や住民税がかかっていない人は該当しない。 

  2008年5月から実施されているが、菅義偉総務相(当時)が制度創設を表明したので、「生みの親」と呼ばれる。居住する自治体から他の自治体に税金を持っていくので、「故郷への寄付」という純粋な意味での寄付とは全く異なるものになっている。 

仲介サイトの利用 

  ふるさと納税は、元横綱の貴乃花がテレビで宣伝している「ふるなび」や、「さとふる」など仲介サイトを利用する人が多い。仲介サイトは、ポイントを付けて利用者の獲得に腐心してきた。 

  国は、ポイントは自治体負担に転嫁されているとして10月1日から禁止したが、仲介サイトの手数料はふるさと納税額から支払われており、これも本来の寄付から逸脱する。 

  ふるさと納税の適用者は、22年が約891万人(09年約3万3000人)で、寄付金額は約9654 億円( 同約65億円)。23年の住民税の控除額は6796億円(10年約18億円)となっており、実績は大きく拡大している。返礼品の拡大と、仲介サイト参入の影響である。 

大都市部への影響 

 
ふるさと納税のために税収減になっているのは、東京23区(地方交付金は不交付)と、政令指定都市で、横浜市、大阪市、川崎市、名古屋市と続く。 

  世田谷区は7月、25年度のふるさと納税による住民税の減収額が約123億円で過去最大を更新と発表した。累計減収額は約570億円に達したという。 

  世田谷区も減収対策として止むを得ずふるさと納税を始めているが、住民税の減収額には全く及ばない。保坂展人区長は、「1 2 3 億円は、学校3校を改築できる予算規模に匹敵する」として、国に早期の制度改正を求めている。 

  ふるさと支援は返礼品付きであったとしても、「純粋な寄付」とすべきである。