鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

原子力空母の上で  第264回

2025/11/12
  「コーンパイプ心に咥くわえ降りてくる」(朝日川柳・阿部功 10月29日) 敗戦直後、マッカーサーが米軍厚木基地に上陸。タラップを降りる元帥の「占領」開始を思い起こさせた。 

  赤坂迎賓館での食事は、米国産コメのグラタンと米国産牛肉のステーキ。ヘンな迎合だ。日本産コメと日本産牛肉の方が余程美味しいはずだ。その代わりに、トランプ大統領を「ノーベル平和賞」に推薦します、とのおべっか。それはまだ愛嬌のうちだ。 

  高市早苗首相、喜色満面。六本木の米軍基地から、大統領専用ヘリコプター「マリーン・ワン」に同乗して、横須賀の米海軍基地に停泊中の原子力空母「ジョージ・ワシントン」に着艦した。整列した米兵の前に並んで立ったトランプが「この女性こそ勝者(ウィナー)だ」とおだてた。その歓呼の声を受けて、高市首相は日米軍事同盟の強化を訴えた。 

  「私は決意している。今後、日本の防衛力を抜本的に強化し、地域の平和と安定により一層積極的に貢献する。大統領と共に世界で最も偉大な同盟になった日米同盟をさらなる高みに引き上げる。日米は共に帆をあげ、自由で開かれた海を進む」 

  高市首相は「跳びはねるように何度も右手を突き上げた」「まるでロックスター」(「毎日新聞」)だった。帰りは海上自衛隊のヘリコプターに搭乗、官邸屋上のヘリポートに直行した。まるで戦争鼓吹の軍事行動のようだった。 

  首相に成り上がりとはいえ、はしゃぎすぎだ。「日本の防衛を抜本的に強化する」。それがトランプに対する最大のプレゼントだ。 

  「日本の自衛隊の最新鋭戦闘機F35に搭載されるミサイル納入の第一弾を承認した。予定より早く届くだろう」「我々は最高の船舶、航空機、潜水艦、技術を持つ。日本とも協力して船舶を再び建造する」。トランプの売り込みは激しい。 

  そればかりか、米国に対して、80兆円の投資が約束させられた。米国の戦争に追随させられる増強を原子力空母上でトランプに誓った。軍事同盟強化。史上最悪。危険な首相だ。