道しるべ

給付抑制と負担強化が続く

2025/11/26
医療制度を巡る動向

        自民党は、日本維新の会との連立政権合意で維新の要求した政策をほぼ丸のみした。自公政権でも医療費の抑制、患者負担増が行われてきたが、自維合意で更に拍車がかかることが必至だ。

        高市早苗首相は、10月24日の所信表明演説で、「これまでの政党間合意も踏まえ、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」、「現役世代の保険料を抑える」などと、医療制度について触れた。維新との合意を踏まえた、「給付の抑制と負担の強化」を促進する危険な内容だ。 

薬剤費の負担増 

         厚労省が掲げる見直しには、薬剤費がある。その一つにOTC類似薬の保険適用除外がある。OTC医薬品とは、薬局やドラックストアで処方箋なしに購入できる市販薬(OTCはO v e r T h e Counterの略でカウンター越しに販売されること)

         風邪薬や湿布、胃腸薬などがあるが、医師の処方でも出してもらえる(保険適用)。これを、保険適用から外し、市販薬で購入するようにさせるものだ。市販薬は高い上に、医師の受診なしの自己判断では、病気の発見が遅れ病状の悪化も懸念される。 

         また、長期収載品(先発医薬品)の選定療養の更なる見直しも掲げられている。ジェネリック医薬品(後発医薬品)があるのに先発医薬品を処方してもらうと、薬価の差額の4分の1を自己負担する制度で、長期収載品を希望すると選定療養費として患者負担が増える。 

         この差額の4分の1を引き上げることを考えている。安いジェネリック医薬品を希望しない患者へのペナルティだ。 

         更に、石破政権で凍結された「高額療養費の自己負担限度額の引上げ」問題は、年内に結論を出すことになっているが、撤回すべきだ。 

70歳以上3割も 

        財務省の財政制度等審議会は11月5日、社会保障制度の改革案を示し、「現役世代の社会保険料負担の軽減」を柱とし、「70歳以上の医療費の自己負担を原則3割に引き上げる」ことを提案した。 

     「現役世代の保険料を抑える」との自維合意と軌を一にする。露骨に医療費の自己負担を強め、現役世代の保険料を抑えると言い出した。子ども施策の財源確保のために、26年度から医療保険料に上乗せ徴収も予定されている。 

       現役世代の社会保険料引下げは、保険料の累進性を高めるとか、5対5の労使折半を4対6に改善するなどすべきで、医療費削減が原資であってはならない。