イチオシ

死の灰保管は原発敷地内で
地下埋設処分は許さない

2020/09/15
廃棄物処理場に応募か

 原発や再処理工場から出る高レベル放射性廃棄物(死の灰)の最終処分場選定に向けた文献調査に、北海道寿都町が応募を検討している。

 原子力発電環境整備機構(NUMO)が最終処分場の「選定」を始めてから20年がたつ。もっぱら自治体が立候補してくれるのを待ってきた。

 立候補があると、処分場建設までに約2年をかけた「文献調査」で、過去に起きた地震の有無などを調査し、約4年をかけた「概要調査」で、ボーリングなどにより地下の岩石や地下水の性質を分析し、14年ほどをかけて地下深くに調査施設を設置し、地質や岩盤を直接調べて、建設地を決定することになるとされる。

 応募すると2年間の「文献調査」で最高約20億円、「概要調査」まで認めれば約90億円の交付金が、立地の成否に関係なく支給されるという。

 片岡春雄町長はこれに目がくらんだ。

非科学的な『特性マップ』

 国家(自民政権、経産省)は2017年に、地層処分の適地を示した『科学的特性マップ』を公表したが、これがいかに非科学的なものであるかは論を待たない。「先に適地ありき」で、これによると日本列島は適地だらけだ。活断層も火山脈も地下水もほとんどの地域で問題ないとされる。日本列島のいたるところを原発の適地して原発列島にしてしまった日本の独占資本と、その国家らしい無責任極まりない『マップ』である。

 かつて北海道民が知らぬ間に、幌延町に地下350メートル以上の深さへの放射性廃棄物の地層処分に関する研究を目的とする「幌延深地層研究センター」(原研=日本原子力研究開発機構の所管)が設置されたが、渋谷澄夫道議(当時)を先頭に反対運動が起こり、小規模な研究設備でも実物(死の灰)は持ち込まないことを約束させている。

再処理は危険無用の長物

 地下に埋設処分されるべきは、ガラス固化された死の灰だとする。

 本紙8月25日号にも書いたように、青森県六ヶ所村に建設された再処理工場はトブブルが続発し、10兆円超を浪費しながら試験運転にも耐えない。

 もともと再処理するよりも燃料棒のままの方が管理保管上はるかにましである。再処理の工程では燃料棒を小さく切断する。それとともに封じ込められていた放射性ガスはすべて大気中に放出される。封じ込められていた個体の放射性物質は硝酸等に溶かされて扱われ、臨界事故を起こしやすい。大量の廃液は高レベルだけに取り扱いは困難で、貯槽は腐食されやすく、水素を発生させて水素爆発なども起こしやすい。

 ウランやプルトニウムを抽出した後の廃液を、溶融したガラスの原料と混ぜながら固化するといっても、この工程も極めて困難で、トラブルが続き、まともに稼働できない。

 国家が六ヶ所村の亡霊を生かして国民を愚弄する原因は、原発の稼働で生まれる使用済み核燃料を、さっさと原発の敷地から外に出してしまいたいという無責任な電力独占資本の意思にある。「中間貯蔵施設」も同類である。

全原発の無条件永久停止を

 持って行き場のない死の灰は、これ以上増やさないことがまず必要だ。全原発を無条件に永久停止し、廃炉にすることだ。

 現在稼働中の原発は定期点検休止も含めて、関電、九電、四国電に9機あるが、即時停止することだ。40年の設計年数を超えて、老朽原発を20年稼働延長させる独占資本とその国家の方針など言語道断だ。

発生者責任を貫かせよう

 全国の原発のプールで貯蔵している使用済み核燃料はすべて発生者責任によって、原発敷地内に永久的に保管するべきものである。水冷方式の後には空冷用キャスクに納め、屋内保管に移行すべきである。漏れが始まる前に新たな建屋で外から覆うなどの工夫も必要となろう。

 原発によって生まれた他の廃棄物も敷地内に保管するのが当然である。

 福島でメルトダウンして生まれている核燃料デブリなども、多大な労働者被曝の犠牲の上に外に取り出して、どこかの最終処分場に持ち出すのではなく、発生者責任の下で半永久的にここに管理保管するしかない。

 高レベル廃棄物は、使用済み核燃料であれ、デブリであれ、ガラス固化体であれ、どこかの地下に埋設処分するなど断じて許されることではない。この地下水豊かな地震・火山列島に、10万年にわたって漏れ出ることのない適地など皆無である。