道しるべ

党内進歩派か共和穏健派か
岐路に立つバイデン政権

2021/01/26
 バイデン米政権は1月20日の大統領就任で発足。ジョージアの決選投票の結果、民主党は上下院とも実質的に多数を得た。共和党は混迷の度を深めているが、スタートから岐路に立っている。

混迷深める共和党

 共和党は大統領選の敗北だけでなく、トランプの選挙後の暴走によって大きなダメージを受けた。トランプという虚像によって、共和党はアメリカの政治権力を手にしていた。

 人種構成で少教派になる予測と若年層で進む社会主義への傾斜などへの白人中間層の不安が、トランプという虚像の「救世主」を生み出したからだ。

 だが、そのトランプは国会乱入事件を起こしても40%の支持を維持する。7400万票を引き寄せたエネルギーは急速に失われることはないようだ。共和党は、トランプの右翼的路線か民主党と妥協を図る穏健路線か、しばらく混迷は避けられないだろう。

地歩固めた進歩派

 一方、民主党内では進歩派が今回の選挙でしっかり地歩を固めた。民主党は下院で10議席減だが、進歩派は増加した。

 その結果、進歩派議員が結集する連邦議会進歩議連(CPC=Congressional Progressive Caucus)は、下院議員96名とサンダース上院議員で構成されることになり、議会で最大の議員集団となった。

 駆け引きでなく、社会運動を通して力をつけ、現実に選挙を通して勝ってきた自信に裏付けられている。そして、トランプの罷免運動でもエンジン役を果たしている。

生ぬるいバイデン

 バイデンは、中道政治家としてエスタブリッシュメント(既成勢力)を擁護する立場を取り、当選後も「国民の和解」を呼びかけてきた。上院で半数を制したといっても、共和党の協力も必要だ。

 共和党が混迷する中、「超党派」政治と称して穏健派の共和党員と協力して中道政治を追求する可能性も強まっている。だが、それは選挙戦でも皮肉られた「生ぬるいバイデン」を地で行くことを意味し、進歩派との対立を深めるものだ。

 米国では昨年の選挙を通して、深刻な社会的不平等や気候変動、感染症を引き起こすシステムとしての「貪欲な資本主義」がクローズアップされ、それを克服する道を進歩派が具体的に示して有権者の支持を広げている。バイデン政権、そして米国の政治は、人類の歴史を「進歩」へと進めるものになるのか、大きな岐路に立っている。