鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

デッドロック上の原発   第209回

2024/09/11
  原発は災難つづき。まるで転落の始まりの様相である。福島原発のメルトダウン事故から13年たっても、溶けだした核燃料棒はいまだ圧力容器を破って、格納容器の底で凝固したまま。猛毒デブリとなって高濃度の放射線を放っている。 

  8月下旬、2号炉のデブリを採取する作業に入った。といってもたかだか3㎎程度を試験的に回収するだけだった。ところが、伸縮式のパイプをつなぐ順番をまちがっていた、ということでご破産、延期となった。 

  そばにいるだけでも致命的というほどのデブリの量は、880トン以上と推定されている。廃炉作業の入り口で、あえなくダウン。さらにデブリ量の多い3号機、それに1号機も順番待ちの状態だ。

  廃炉作業は30年から40年がかかる、といわれている。それさえうまくいくかどうか、わからない。たとえ、それがうまく行ったにしても、取り出したデブリをどうするか、それも未定だ。 

  岸田文雄首相の無知、無謀な「原発回帰」政策にもかかわらず、各地の原発の再稼働はなかなか進まない。東海第2号炉は、防潮堤工事がいかにいい加減だったか、工事関係者からの内部告発があってから1年。今のところ再稼働の見通しはない。 

  それに追い討ちをかけたのが、8月上旬の福井県敦賀2号炉の「再稼働不許可」。原子力規制委は原子炉直下に活断層があるとして、再稼働を認めなかった。これで日本原電の敦賀原発は全滅。残るは東海第2だけだが、先行きの経営は困難になろう。 

  いまのところ、全国の原発27基が再稼働を申請している。かつて建設された約半分になったが、このうち、再稼働したのが12基だけだ。ところが、その使用済み燃料の処分施設としての六ヶ所村(青森県)の再処理工場は、27回目の延期宣言がされた。 

  建設開始から31年。こんどは本当だ、こんどは本当だ、との狼少年。その完成を誰も信じていない。それぞれの原発が、自分の構内に「乾式貯蔵」となりそうだ。危険物を他所にやる、という自分勝手が、ブーメランのように返ってくる。