今週の新社会

欧米では温かい食事
軍事費削って対策を

2024/02/07
能登地震
災 害 対 策 の貧困浮き彫り


  250人を近い死者・行方不明者、おびただしい建物倒壊、ライフライン崩壊などが起きた能登半島地震は、災害列島日本の災害対策の貧困を浮き彫りにした。阪神淡路大震災を機に、新社会党初代委員長を務めた矢田部理参院議員(当時)らが作成した「平和戦略研究会」の提言や、欧米・イタリアの被災者支援を例にあるべき災害対策を探る。

  阪神淡路大震災(1995年)から今日までM(マグニチュード)7・0以上の大地震は4回起きた。台風被害や水害も毎年のように起きる日本は世界有数の災害大国。 

  しかし、能登半島地震に見られるように、被災者支援や救援体制はお粗末の極み。国民は、自然災害だから仕方ない、支援はボランティアで、地元自治体でと思わされている。 

  欧米で「体育館で雑魚寝」はない。感染症の危険性が高く、段ボールの仕切りでプライバシーは守れない。避難所になる体育館の多くはエアコン未設置。避難所で、おにぎりやパンなどの非常食。飲料水、トイレ、ふろ等々、被災者への人道支援活動のための「スフィア基準」(人道憲章と人道対応に関する国際的な最低基準)に遠く及ばず、災害関連死も防げない。 

  日本と同じ地震国のイタリアでは、家族ごとの冷暖房付きの大きなテントにカーペットが敷かれ、人数分のベッド、シャワーやトイレは移動型のコンテナに設置されている。 

  食堂は巨大なテントで、キッチンコンテナで調理された温かい食事が提供される。温かい食事は、被災者を元気づけ、生活再建のために欠かせない。 

  イタリアでは年間約3000億円の国家予算で、全人口の0・5%にあたるテントやキッチン、トイレ、ベッドなどを備蓄・管理している。その主体は市民保護庁だ。

  日本の被災者対応は自治体丸投げ、そして自衛隊の出動だ。しかし、自治体職員は定期異動のためノウハウが蓄積されない。しかもかなりの割合が非正規職員。自衛隊も救助活動は主任務ではない。 

  「平和戦略研」は、30年前に「日本に専門の災害救助組織を」と提言した。提言では自治体の災害対処能力の向上とともに、3000人規模の内閣直属の大規模災害対処機関設置を訴えている。米国の緊急事態管理庁を調査した上での提言だ。 

  戦争準備の軍事費2倍化ではなく、首都直下地震や南海トラフ地震、風水害対策の予算を優先すべきだ。